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3つの単語 短い話

祈り、ビートに乗せられた

 

 

人人人 平和音楽 笑い顔 ミサイル発射 ニュース速報

 

灼熱の太陽が管楽器の音にかき消されるようでいて、肌には確かに熱が残った。分刻みで赤くなっていく腕に羽虫がとまる。腕時計をした部分は生白いまま取り残された過去の記憶のように、あまりにも僕自身である気がして胸の辺りがむかむかとしてくる。手足がしびれる。熱中症の予兆。酒を呷ってもそのしびれは収まらない。

 

燃える皮膚 冷えてく目玉 どうするの? あなたの声で 目覚める眠り

 

ビートに合わせて人々は踊る。僕も自然と体を動かしている。音楽の祭典は高揚感によって酔わせる、人々を、普段からまとわりついてくる不安や焦燥を排除するための音楽であり、それは強制的に行なわれる。言葉が酩酊してくる。それはビートのせいであり、メロディのせいであり、アジテーションのせいでもある。髪の長い男がマイクに向け叫んだ。人々は拳を突き上げた。

 

ハウリング すぐ目の前の 見知らぬ娘 白いうなじを 切り裂けたなら

 

人口密度が高い。女の匂いがする。髪をかきあげた女のうなじにタトゥーが見える。男は首筋に汗をかいている。空は青すぎる青さでその中を鳶が飛んでいる。嘘みたいに、ゆっくりと。僕は時折ステージから目を外して、空を見上げる。俺はいったい何をしているんだ? ふと我に返る瞬間が、熱狂の最中に突如として生起する。僕はステージに再び目を戻す。サングラスをかけた男がマイクに向け叫んだ。人々は拳を突き上げた。

 

 

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