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3つの単語 短い話

天気予報 主語 コップ

 天気予報が大雪を報じていた。その日の朝に彼は生まれた。彼は大声で泣いた。赤ん坊は泣くのが務めであると彼の祖母は大いに喜んだ。彼はいつまで経っても目を開けなかった。彼は生まれつき目が見えなかった。そのことで何か苦労したかといえば、周囲の人間が思っているほどでもなかった。彼は目が見えなかったが、その代わりに、これから起こるすべての出来事を知っていた。彼はそのことに3歳で気づき、それ以降、目が見えないことを逆手に取って悪事を働いた。目が見えない者が未来を予知する能力を駆使して悪事を働こうとするなど、思ってもみないことだった。だから彼の悪事は露見しなかった。あらゆる悪事は、罪のない人々に濡れ衣を着せることで逃げおおせ、その利益を彼は思う存分享受した。彼の犯罪には主語がなかった。彼自身を含めた犯罪にまつわる主部は仮装の中に隠蔽され、壊された述部だけが結果として残り、それが人々の利益を損なった。彼はこれから起こるすべての出来事を知っていたから、誰とも心を通わせることができず、誰のことも好きになれなかった。それは一種の悲劇だった。目が見えないことそのものよりも、その代わりに与えられた能力によって、彼は幸せから程遠い場所で、一人、孤独だった。彼の母親は、彼がこれから起こるすべての出来事を知っていることを、知らなかった。父親も、兄弟も、後に生まれることになる彼の息子も知らなかった。彼は次々に犯罪を起こした。大きなものから小さなものまで含めると、彼の行ないだけで1つの国が消し飛ぶほどの悪事が積み重ねられた。やがてそれは地球規模にまで膨れ上がり、最終的に惑星を破滅に追いやったが、最後まで人々はそれが彼によるものだということに気付かなかった。惑星が破滅した後、何が起こるか彼は知っていた。これから起こるすべての出来事を知っている彼が、燃えつくされた森林を、汚染された土壌を、枯渇した河川を、人々の手から奪い取ったのだとしたら、彼にとってそれにまさる喜びはなかった。彼以外の人間が一人残らず消え去った惑星で、種子は再び複製することを望んだ。新たに芽吹いた種子は続々と交配を重ね、1つの共同体を作り上げた。共同体には序列が生まれた。彼は創世者としてその頂点に君臨した。その時にはもう、目が見えないどころか耳も聞こえず、両腕は失われ、内臓は壊死していた。それでも彼は大雪の日に生まれた子どもとして凍てついた精神を永久に溶かすことなく、沈殿した思考をかき混ぜて撹拌させた。彼の思考が種子たちの行動原理となった。それは遺伝子に組み込まれた呪いとして抜群の機能性を誇った。時折生まれたバグは抹殺された。バグは反乱を起こそうとしたが、そもそもバグが起こることを彼は知っていたから、あらかじめ対処しておけば問題はなかった。積み木を崩す、パズルを埋める、はんこを押す、コップを揺らす、時計を止める、核爆弾を作る、テレビを背負う、煙草を開く、カーテンを漏らす、雨を乾かす、帽子をかばう、鉄を贖う、嘘を燃やす、これらは彼が犯した罪の一部分に過ぎない。しかしそれがすべてだという者もいた。意見は平行線を辿った。結論が出る前に、惑星の地核は崩壊し、宇宙の端まで種子は拡散した。宇宙には終わりがあった。酸素がない、光がない、宇宙の最北端で彼はようやく知らないことを見つけた。それがどのようなものだったか、今となっては彼自身も思い出すことができなかった。