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3つの単語 短い話

サングラス 埋め合わせ 水族館

 すれ違った野良犬がサングラスをかけていたような気がして、そんな馬鹿な。後ろ姿はパープルやライムグリーンをあしらった派手なマダムで。紐でつながれた犬はダックスフンドか? 「クリムトの描く女の乾いた髪の毛」はわざわざ道を戻って散歩する者たちを見て、やはり、犬はサングラスを。「どうしてですか?」そのように聞いたはず。マダムには聞こえない「場合」だったらしく、聞こえる「場合」に連絡してくれと手渡された紙切れを「クリムトの描く女の乾いた髪の毛」は飛行機にして飛ばした思い出、って。どうかしている。どうかしていないわけがない。どうかしていなかったとしても、それは正義とは限らなく。「クリムトの描く女の乾いた髪の毛」は自宅に帰りストーブの火が燃え移らないように注意しながら温まるため冬は生き辛い、南国への移住を計画している。電話が鳴らない。だからこちらから電話をかける。電話の向こうでクリムトは言い訳ばかりで。「この前だってドタキャンされたんだから。ね? ドタスタでキャンドル。意味、わかってるの?」「埋め合わせは必ずするよ。でも、今はまだ別の女のところにいるから」クリムトは答えた。相変わらずデリカシーがないのなんのって。「クリムトの描く女の乾いた髪の毛」にとって、これほど電話を切るための好都合。窓ガラスが凍りついて、外には出たくない。テレビをつけた。ニュース番組でアナウンサーが笑って、「クリムトの描く女の乾いた髪の毛」も笑って。「毎秒ごとに下がる気温が原因かどうかは定かではなく、水族館の水槽があらゆる時系列において凍りつき、みなさん、見に行きましょう、この機会に」アナウンサーはそう言い残してボールペンを首に突き刺し自殺、2分後にはスポーツ新聞一面に吹き出る血しぶきが掲載されて国際連合から勧告を受けてこの国は崩壊した。「クリムトの描く乾いた髪の毛」はそれを機に南国への移住を決意、ドミニカ共和国の強烈な日差しに目が眩んでも、これでもう暖房器具から燃え移ることがないとわかると「クリムトの描く女の乾いた髪の毛」は強気だ。ようやくクリムトが迎えに来てくれるらしい。空港で待っている。彼は絵に描いてくれる。きっと美しく描いてくれる。