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3つの単語 短い話

アルミニウム 横顔 矛盾

 校庭のど真ん中に、直径8メートルの巨大な鉄球が現れた。前日まではそんなものなかった。今朝になって、唐突に姿を現したのだ。登校すると学校中が騒然となっていた。皆が珍しがって鉄の球に群がり、周囲を走り回ったり恐る恐る手で触れたりしていた。すぐに警察がやってきて捜査が始まったが、結局のところ何もかもが不明だった。一つだけわかったことは、科学捜査班の調査により鉄球の材質がアルミニウムであるという、ただそれだけのことだった。授業中、鉄球は校庭に鎮座し続けた。直径8メートルというと、見ようと意識していなくてもつい目に入ってしまう、それくらいの異常な大きさだ。3時間目の体育は急遽、体育館で行なわれることになった。アルミニウムという金属はそれほど重くないはずなのに、鉄球は押しても引いても動かなかった。それは実のところ球体ではなく、まち針の“まち”のような部分が地表に出ているだけで、針の部分が地中に突き刺さっているのではないか、だから動かないのではないか、私はそんな突拍子もない推測を友人たちと話し合ったりした。ほとんどの生徒は鉄球のことが気になって勉強どころではなかった。それは先生たちも同じだった。昼休み、クラスメイトのイソミが一緒にトイレへ行こうと言い出した。私はイソミとそれほど仲がいいわけではなかったので、断った。「一生のお願い」とイソミは食い下がった。それならば仕方がない、と私は西階段の女子トイレへ向かった。トイレには先客がいた。チャギーは私たちに背中を向けて、突き当りの壁ぎわでうずくまっていた。「どうしたの?」私が声を掛けると、チャギーはひどく驚いた様子で振り返り、手に持っていたものを咄嗟にポケットの中に隠した。「あんた、それ、ミニ・マテリアだよね?」突然、イソミが聞いたことのない恐ろしい声で怒鳴った。突如として雰囲気が豹変した。横顔が醜く歪み、歯茎をむき出しにして、小鼻が倍以上膨らんでいた。チャギーは青ざめた顔で首を振った。イソミはそれを見てさらに激昂した。「嘘つき! マテリアはボルゾーグ幽体によって運ばれてきたんだから、あんたにミニ・マテリアを持つ資格はないんだよ!」イソミは恐ろしい顔つきのままチャギーに駆け寄り、ポケットの中身を強引に取り出した。チャギーの手のひらには鶏卵ほどの大きさの鉄球が握られていた。それは校庭に現れた巨大な鉄球のミニチュアであるように見えた。「隠れてコソコソしてると、ボルゾーグ幽体に“循環削除”されるよ」さっきからイソミは何のことを言っているのだろう。チャギーはイソミにミニチュアの鉄球を渡した。イソミはそれを受け取って、口の中に放り込み、一息に飲み込んだ。ネズミを飲み込んだヘビのように、喉が大きく、丸く、膨らんだ。まるで化け物のようだ。チャギーはそれを見て泣き出した。私だって泣きたかった。一刻も早くこの場から逃げたかった。でも私の足は動かなかった。心と体が矛盾している。足の裏に針が生えて、地面に突き刺さったみたいだった。まるであの巨大な鉄球のように。イソミは微笑みながら、私のスカートをめくり、パンツを下ろした。私は抵抗できなかった。イソミは私の股の間からお腹の中に深く手を突っ込んで、引き抜いた。彼女の手のひらにはぬるぬるとした粘液に覆われたミニ・マテリアが握られていた。イソミがそれを嬉しそうに口の中へ放り込んだ瞬間、窓の外からボルゾーグ幽体が入り込んできて、私は循環削除された。