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3つの単語 短い話

セロテープ タトゥー 酸素

 セロテープと厚紙でロボットを作る。夏休みの宿題だ。ダンは一刻も早く制作に取り掛かるため、大急ぎで家に帰った。母親のモニカは台所で昼食を作っている最中だった。ダンは息を弾ませながら玄関のドアを開け、モニカの大きな臀部に飛びついた。「最強のロボットを作るんだ!」開口一番、ダンは叫んだ。モニカは振り向いて、息子の嬉しそうな笑顔を確認すると穏やかに微笑んだ。「それはよかった」「最強のロボットを作ったら、ロボットは、どうなると思う?」「最強というぐらいだから、正義の味方として、悪い奴らを倒すんでしょうね」「違うよ」小さな息子は不敵な笑みを浮かべた。モニカは細かく刻んだ玉ねぎにバターを加えて、飴色へと変色させているところだった。「最強であるがゆえに、どうなることもできないんだ」ダンはどこか達観した様子で言った。モニカは理解に苦しんだ。最強であるがゆえに、どうなることもできない? 「実は、僕も将来、そうなる予定なんだよね」そう言い残すとダンは2階にある自分の部屋へ駆けていった。モニカはいつものように、脱ぎっぱなしになった靴下について小言を言った。ダンはそれを無視して部屋に入った。早速、勉強机に座って作業を始めた。ダンはロボットのパーツとなる厚紙をいくつか切り分けた。それを丸めて、セロテープで固定した。そして、すぐに飽きた。最強のロボットを作るまでもなく、あと少しすれば最強の人間がやってくることになっているのだ。こんなことをしても意味がないではないか、そうダン少年は考えた。その考えは正しいとも言えるが、間違っているとも言える。つまり、切り口の問題だった。その頃、下の階で玄関のチャイムが鳴った。モニカは料理の手を止めて、来客に対応した。作業着を着た大男が、水道管の点検に来たと言ってIDカードを見せた。丸太のように太い腕が汗で濡れていた。右腕にはトカゲの模様のタトゥーが入っている。そう、彼こそまさしく最強の人間だった。文字通り彼は、最も、強かった。彼は最強であるがゆえに、どうなることもできず、回り回ってこの街に流れ着き、職を探してみたがうまく見つからず、ホームレス同然のような生活をしながら、頭に浮かぶのは社会に対する恨みつらみ、それもすべて彼が最強であることに起因していることは彼自身重々承知してはいたものの、それでもいつかこの腐敗し切った社会に復讐してやるのだという執念は消えず、それがついに表面化した結果、ここ数週間のうち実に80件近くものハイペースで、水道管の点検に来たと嘘を吐いて近辺の家々を訪問し、美しい若妻たちを次々とレイプした。モニカは最強の人間に犯された。最強の人間は証拠隠滅のために彼女の首を絞めて殺した。モニカは息絶えるまでのわずか数秒間、脳細胞が強く酸素を欲するのを感じながら、薄れ行く意識の中で最強のロボットに助けを求めていた。ダンはベッドに寝転びながらコミック本を読んでいた。最強のロボットは制作段階で打ち捨てられ、力なく床に転がっていた。