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3つの単語 短い話

黒髪 ペットボトル カウントダウン

 切り刻まれた黒髪が床一面に敷き詰められた部屋で、君はダンスを踊った。真っ黒な絨毯の上で、君の靭やかな生白い手足がおぞましいほど際立っている。僕が部屋に入ると君は踊るのを止めた。ふわふわとした黒髪の束の上で、君はふいに足を滑らせた。僕は慌てて駆け寄ろうとした。でも君は天井を見上げたまま、黙って腕を上げ、それを制した。「もうこれ以上、何ものをも犠牲にすることなんてできない」君の意思は固かった。「わかった」僕はどうにか声を絞り出して、それから、バッグの中に忍ばせてあったペットボトルを取り出した。蓋を開け、中身の液体を頭から被った。部屋中にガソリンの臭いが充満した。「いつだってそうだね。子どもじみた脅迫ばかり」君は取り合わなかった。僕は本気だった。「君は後悔することになる。それでもいいのか?」床一面の黒髪が波を打って、僕を嘲り、笑った。僕はポケットからナイフを取り出して、床に思い切り突き刺した。100万デシベルの悲鳴が部屋中に響き渡って、僕たちは聴力を失った。もう君の声を聞かなくていいと思うと、驚くほど気持ちが楽になった。もうあなたの声を聞かなくてもいいと思うと、最高の気分だった。あなたはびしょ濡れになって子犬みたいに震えている。でもそれは私の知ったことではなかった。窓の外から爆発音が聞こえた。いよいよカウントダウンが始まる。この街で戦争が始まるのだ。黒い毛髪を奪われた民衆が、軍部に対してクーデターを起こした。いずれ私は血祭りにあげられる運命にあった。だけど、だからといって、最後の夜をあなたと過ごす気分になんてなれそうにない。私はタバコに火を付けて、人生最後の一服をした。「さようなら」耳は聞こえなかったけど、あなたの口の形は確かにそうやって動いた。ガソリンの臭いが鼻を突いた。私はうんざりした気分で頷いて、火の付いたタバコをあなたに向けて放り投げた。